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【島Books & Culture】島をより深く味わう1冊|『都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡』

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  • 『都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡』
    高橋博之 著(光文社|2016年|740円+税)

頭と心で味わう「食」つくるとたべるがつながる社会へ

東京で生まれ育った私にとって、自然と切り離された都会の暮らしは日常ではあるが、ふとわき上がるように自然が恋しくなることがある。瑞々しい緑に目を潤し、深く全身で呼吸したい。心も体もほどけていくような歓びに身を浸したいと、ほとんど本能的に思っている。そんなとき私は、祖父母が暮らした瀬戸内の島を想う。そして、都会から離れたところに心のよりどころとなる場所や人がいることに、大きな安心感を覚えるのだ。

『東北食べる通信』の編集長・高橋博之氏は、都市住民の抱える問題は「生きる実感の喪失」にあると指摘する。都会で生まれ育った若者たちが地方に憧れるのも、自然とのつながりが絶たれたことで、自らの「生」を自覚することができなくなっているからだという。高橋氏は、この都市住民の危機的な状況を救う鍵が、人口減少や高齢化に苦しむ地方の農漁村にあると語っている。

かつて故郷の岩手県で県議会議員をしていた高橋氏は、政界を引退した後、東日本大震災の被災地をはじめとする東北の第一次産業を何とかしたいと、事業を立ち上げた。そして都会と田舎を行き来する生活の中で、地方には都市住民の喪失した「生きがい」や「人とのつながり」という大切な価値が残っているということに気づいたのだという。そこで、都市と地方をかきまぜるための“棒”としての役割を“食”に託し、その入り口として『東北食べる通信』を創刊したのだ。

『東北食べる通信』が革新的なのは、生産者の情報を「見える化」するという試みが行われていることである。消費者には“旬の生産物”とともに、生産者の生き様、哲学、世界観など一連の“物語”が届けられる。食べ物を通して「顔の見える関係」となった両者の距離は近づき、消費者の中には実際に現地に赴き生産者の手伝いをする人や、家族ぐるみの付き合いをしている人もいるという。このような交流の場が増えることは、田舎のない若者たちにも心のよりどころとなるような「第二のふるさと」が生まれる可能性を秘めている。現在「食べる通信」の活動は日本全国に拡大し、各地の「ご当地食べる通信」が注目を集めている。兵庫県淡路島や鹿児島県長島など、離島地域にまでその輪は広がっているようだ。

日々「命」の現場で戦う生産者たちは、「生」に貪欲に生きている。命の重みとありがたみを知っている彼らだからこそ、その言葉は私たちの心に深く響いてくる。つくるとたべるをつなぐ運動が広がることで、世の中の「食」に対する意識にどのように変化が起こるのだろう。始まったばかりの「食なおし」という「世なおし」に、大きな期待を寄せたい。

(文・北坊あいり)

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