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島々仕事人 #011 五島列島支援プロジェクト 小島由光さん

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「島々仕事人」は島と島をつなぐ仕事に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、長崎県五島列島の歴史と文化を守るため活動を続ける五島列島支援プロジェクトの小島由光さんです。

島の歴史に刻まれた自身のルーツ

福江島に広がるひまわり畑に、エメラルドグリーンに輝く中通島の海、久賀島に佇む教会。五島列島支援プロジェクトのFacebookページをのぞくと、まるで島から届いたポストカードのように美しい風景とコメントが日々投稿され、多くのファンを島に惹きつけている。五島列島支援プロジェクトは、東京で流通外食コンサルとして活躍する小島由光さんが舵をとる、五島列島の地域振興活動だ。五島が誇る水産業の盛り上げや、歴史文化の保全などを通して、島に暮らす人々を島外から支えている。

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五島列島には、明治時代以降にキリスト教徒によって建てられた教会群があり、現在も信者によって大事に守られている。関東で生まれ育った小島さんがはじめて島を訪れたのは2009年。両親に祖父母が久賀島と奈留島の生まれであることを告げられた小島さんは現地で、自らの祖先が島の歴史に残る悲惨な弾圧を受けたキリシタンだったことを知る。自身のルーツにおどろきながら、同時に、過疎が進行する島の現状に懸念を抱いた小島さんは、「島のために何かできないか」と考えはじめた。

島の歴史や文化を残していくためは人が暮らしていくことが必要であり、そのためには生業が必要。そこで、小島さんは水産業の活性化を図るため、島で水揚げされる鮮魚を関東に流通させる事業をスタートさせた。

 

五島の鮮魚を関東へ。検証を重ね150店舗に展開

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五島列島近海は黒潮から対馬海流に分岐する潮の流れによって、豊富な魚種が回遊する日本有数の漁場として知られる。大小140の島々が連なる五島列島には数々の漁港があり、高い漁獲高を誇るが、意外なことに鮮魚の流通は関西止まりで、関東には送られていなかった。「鮮度の問題や食文化の違い、遠隔地との取引で生じる信用問題などがあり、島側も関東への流通は難しいと考えていた」(小島さん)。

五島から東京まで鮮魚を運ぶには中2日がかかる。その過程で質に問題が生じるのか。小島さんは東京・新橋で経営する飲食店「東京立ち飲みバル」に鮮魚を届け、検証を重ねながら鮮度をキープする方法を確立。外食業界のネットワークを通じて飲食関係者に売り込みを行った。「こっち(関東)の人を説得するのにまず1年かかりましたね」(小島さん)。

鮮魚の流通は現在、五島列島支援プロジェクトから枝分かれした「五島列島水産流通」の名で行われており、島外150店舗の飲食店へ鮮魚が届けられている。東京立ち飲みバルにも毎週月曜日と木曜日に鮮魚が届けられており、取材を行った日にも、アカハタ、イサキ、クロムツ、クロホシフエダイ、カンパチなどが詰めこまれた発泡スチロール箱が到着した。

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「飲食店側の心理は理解しているので」と話す小島さんは、外食業界で養った知見とネットワークを余すところなく島に注いでいる。水産流通の売上高は5,000万規模に成長し、島側に年間4,500万の利益をもたらせるようになってきた。「1億まで持っていきたいですね」と小島さんは意気込む。

注目の集まる教会群。史実に目を向けてほしい

自身のルーツを知った日から、活動を続けて6年が経った。その間の苦労は「信頼を得るには時間がかかること」で、島を訪れる日々のなかでは小島さんの行動が不審に思われることもあったという。よそ者である立場は今後も消えないというが、真摯な姿勢は着実に信頼へと変わってきている。

五島列島の教会群は建築的価値から、世界文化遺産登録に向けた動きもある。島に注目が集まるなか、小島さんは「五島キリシタンの信仰の歴史をしっかり伝え、理解を得ることが難しいところも伝えていきたい」と、奥深さへの理解を求める。

今後の展望は「観光誘致、地域活性、五島カトリック教会の保全・信仰の歴史を継承すること」。「鮮魚については量的な拡大で、島に落ちるお金を増やし、また多くの方々にキリシタン文化や教会の歴史に触れてもらう機会も増やしたい」(小島さん)。

ここまでに生まれた成果は大きいと見えるが、小島さんに聞くと「まだ何も出来ていないと思っている」らしい。素朴ながらも荘厳な美しさを秘める五島の島々を、小島さんは静かな情熱で支えていく。

(文・鯨本あつこ/写真・大久保昌宏)


プロフィール/
小島由光さん
内閣官房地域活性化伝道師。株式会社スーパーソニック代表取締役。五島市ふるさと大使。新上五島町観光物産大使。五島列島をはじめ全国で地域活性化活動、6次産業化をプランニング。第3次産業側の目線をもって提案する地域活性化・流通外食コンサルタントとして活躍。 http://gotoproject.jp/

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