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【季刊ritokei|エッセイ】奄美の島柄「笑っ島」

島をながめていると、人にみえてくる。同じ人間がいないように、同じ島はない(名前が同じことはあります)。文化や歴史は人がつくりもので、つまり島の性格も人次第。人と出逢えば、島がすこし、見えてくる。※この記事は『季刊ritokei』02号(2012年4月発行号)掲載記事になります。

■奄美の島柄「笑っ島」

「奄美(あまみ)」と聞いて、なにを思い浮かべるだろう。
南西の島だけに気温は高めで海は青い。でも、そのほかは?

鹿児島本土と沖縄の間に浮かぶ奄美群島(※)は、薩摩、琉球、アメリカ統治の影響を受けてきた複雑な歴史をもつ島々で、大島紬や黒糖焼酎が有名。ハブがいる島といない島がある(※)。群島内で一番大きな奄美大島には、日本で2番目に広大なマングローブ林がありながら、24時間スーパーや家電量販店もある。そのあとは??

3月に奄美大島を訪れた。奄美をよく知りたかった私たちは、厚かましくも「働く島人」特集にご登場いただいた麓憲吾さんに相談したところ、麓さんの経営するライブハウス(※)で飲み会を開いてもらえることになった。

ライブハウスのある屋仁川(やにがわ)は、100mに300軒の飲食店が軒を連ねる奄美最大の歓楽街。夕暮れを待っていたかのように灯りが灯りはじめる通り沿いの会場に集合すると、ぽつりぽつりと島人たちがやってきて、かたくるしい挨拶は早々に切り上げ、いつもこうだというように語り、笑いはじめた。

この辺りでは「島人」を「しまんちゅ」ではなく「シマッチュ」と言い、「先輩」を「あにょ」「あに」というらしい。昔からの仲間なんだろうシマッチュたちの会話に、「あにょ」や「○○あに」が交じるせいか、奄美の島言葉には、ほんわかした親しみがある。

この日、ライブハウスは定休日。シマッチュの笑い声が響く酒盛りの光景は、まるでライブ終了後の打ち上げのようだった。それもそのはず、ここに集まるシマッチュのほとんどが本業のかたわらで、ラジオの帯番組を持っていたり、島のイベントで活躍するバンドに属しているアーティストらしい。しかも、日本最大の音楽フェスに出演してしまうバンド(※)まであるそうだ。

ここで驚くのは彼らのほとんどが公務員ということだ。つまりさっきまで公職にあたっていたということ。

そんな公務員シマッチュたちに囲まれて妙な違和感を感じていると、ステージ上で脚立芸(?!)が始まった。脚立の上のシマッチュももちろん公務員で、「えー・・・、今日は、東京から、くじらもとさんがおこしくださり・・・」と続く脚立漫談に、「いさもとさんて」「最高や〜」「ははははは」と、やじが飛び、笑いが巻き起こった。

公務員はともかく、どうやらこの島の人は、相当な芸達者だ。聞けば、結婚式はじめ、シマッチュが大勢集まるところには「余興」がつきものらしい(※)。人口7万人とはいえこの規模のコミュニティでは同じ人の芸を何度も目にすることもあるだろう。同じ芸をしていては飽きられるのか、場数を踏んできたと思われるシマッチュの芸はやたら細かった。シマッチュの芸は島言葉で語られるので、正直わからない部分もあるのだが、取材班一同、お腹がよじれるほど笑い転げていた。

ステージのスクリーンには、奄美の人気島唄をアレンジするバンド「サーモン&ガーリック」や「カサリンチュ」などのライブ映像が流れていた。

ちょうど隣に座っていたサーモン&ガーリックのサーモンさんが、生まれ育った奄美の街から田舎の集落に転勤となった時のことを話してくれた。
「あれはちょうど野茂英雄がアメリカへ渡った頃でした。野茂はすごいなぁ、メジャーで1勝あげて。わん(私)、まだここで1勝もあげれとらん」。その集落では、敬老会さえも大余興大会だったらしい。「なんでかわかりますか?だって、自分たちで面白いことをつくらないと何もないからです」。

何もないからつくる。これは島ではスタンダードな考えだ。奄美大島では、この考えをもとにシマッチュによるシマッチュのためのラジオ局がつくられ、多くのシマッチュを楽しませている「Y-1グランプリ」(※)や「奄美紅白歌合戦」(※)なども開催されている。この場にいるシマッチュたちはそんな中心にいるメンバーだった。

はじめに公務員と聞いておどろいた自分は、ただただ、許容が狭かったのかもしれない。公務員だ何だと言うことよりも大事なのは、彼らが島のみんなが楽しむ場を作り出しているのということだ。(彼らはそれを「必死にふざけている」と言っていた)

子どもたちは、テレビの中の芸人ではなく、アイドルユニットを模するシマッチュの真似をし、唄や笑いはラジオやインターネットをつたって本土から海外まで届き、島を離れたシマッチュの耳にも響いている。

飲み会のはじまりから終わりまでシマッチュたちは笑いつづけていた。ネタはたいてい仲間の話で、「あれは最高だったやー」「あにょすてきよ〜」と、目に涙を浮かべるほど、笑いつづけている。

シマッチュに愛される豊かな笑いと文化がある島の夜。これも奄美なんだと思った。


<注釈>
奄美群島※
奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島等有人8島。鹿児島市の南西約370~560kmの範囲に位置し、奄美大島は鹿児島~沖縄間のほぼ中間に位置する

ハブがいる島といない島がある※
奄美群島のうち喜界島、沖永良部島、与論島にハブはいない

ライブハウス※
名瀬(なぜ)地区に1998年に誕生したライブハウス「ASIVI(アシビ)」。島内だけでなく本土のアーティストも訪れている

日本最大の音楽フェスに出演してしまうバンド※
奄美大島には複数のバンドがあるが「サーモン&ガーリック」はフジロックフェスティバルに出場経験がある

「余興」がつきものらしい※
奄美大島名瀬地区の結婚式は300名ほどが会費制で行われ、新郎新婦の友人による「余興実行員」が式の企画振興を取り仕切る

「Y-1グランプリ」※
Y-1のYは「余興」。余興文化を讃えるかのようシマッチュで余興芸が競われる

「奄美紅白歌合戦」※
12月25日に独自開催されるシマッチュたちの歌合戦。毎回チケットが完売するほど人気

(文・鯨本あつこ 写真・石神和哉、田向勝大)
※この記事は『季刊ritokei』02号(2012年4月発行号)に掲載された記事になります。

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