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【特集|しまのがっこう】より良い「しまのがっこう」を目指すには何が必要ですか?

島の学校は豊かな自然環境に恵まれる一方、ほとんどが小規模で他の学校と遠く離れている。都会の学校に比べて島の学校にはどんな良さや課題があるのか。日本の教育事情に詳しく、ひとりの島好きとしてプライベートで島々を訪れている野村総合研究所主任研究員(取材当時)の望月洋佑さんに本紙編集長 鯨本が話を聞いた。※この記事は『季刊ritokei』08号(2014年2月発行号)掲載記事になります。

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より良い学校づくりは「みんなが同じ方向を向くこと」から

鯨本

より良い「しまのがっこう」を目指すために必要なことを伺う前に、日本全体が抱えている教育の課題はありますか?

望月

どこでも言われているのが「家で勉強をしない」「本を読まない」ということ。地域によっでは「体力が落ちている」とも言われています。

鯨本

体力とは意外ですね。

望月

意外ですが地方の子は歩かないことも多くて、学校が遠いのでバスや送り迎えになるんです。ほかには「中1ギャップ」という課題もあります。これは都会でも同じですが、小学校から中学校にあがるときに環境が変わりすぎて参っちゃうんです。

鯨本

離島でいえば「15の春」の状態ですね。

望月

離島は特に常識が違いすぎますね。人口500人の島から100万人都市の高校に進学して、馴染めない子もいれば、めちゃくちゃ弾けてしまう子もいる。その衝撃に対してはサポートが必要ですね。

鯨本

島特有の課題はありますか?

望月

子どもの数が圧倒的に少なく複式学級にならざるを得ないのは、課題といえば課題です。少なくて良い人もいれば、多いほうが良いという人もいるので、正解はないのですが、複式学級で1〜2年生が同じクラスで授業を受けると、どうしても片方の学年が自主学習になってしまいます。「周りの人と教え合う」ことが学力向上に効果があることは教育現場でポピュラーですが、学校に人数がいなければなかなかできないんです。

鯨本

なるほど。難しいですね。

望月

ほかにも「廃合」の課題があります。

鯨本

統合はいろいろな島でよく聞きます。

望月

これには行政のコストの問題がありますが、たとえば僻地に指定される学校は先生の赴任手当が厚いので僻地にたくさん学校を置くと行政の予算が持たないんです。

鯨本

それでも統合や新設に反対する人はたくさんいますよね。

望月

地元の人はに反対することが多いですね。自分の母校がなくなるのは誰でも嫌ですし。鉄道がないところは駅ではなく学校が地域のハブになると言われているんです。

鯨本

確かに。集落の運動会もあったりしますしね。

望月

たとえば奄美大島なら、それぞれの集落で微妙に言葉が違ったりもするので、簡単に1校にしたところで上手くいかないですよね。ただ、施設の問題もあって、今は耐震化しなくてはならなくて津波に近いところに学校を置けなくなっているんです。だから新設・耐震化や移転が必要で。

鯨本

難しい問題ですね。

望月

今の学校を維持できなくなることはみんな頭では分かっているんです。でも、それをいつやるかの問題になっている。理屈ではなく話し合いでしか解決しないんです。

鯨本

島の教育環境で優れているのはどんなところですか?

望月

子どもを地域が育てていることです。島に限らず小さな地域はそうだと思いますが、みんながその子のことを知っていて、この土地の子だとみんなが思っている。たとえば、東京にある1校1,000人規模の地域じゃ隣の子は知らないですよね。

鯨本

子どもたちも誰が地域のおじちゃんか分かりますよね。

望月

東京だとちょっと子どもに声かけると保護者の間で不審者情報がメールでまわってきたりします。地域で育てようとしても大人が阻害されてしまう。どこの行政もやろうとはしているんですが、「地域子育て」は都会では難しいんです。

鯨本

都会の良さもあるんですか?

望月

都会は競争環境にあるので、横並び意識に偏ることは少ないです。あと、判断力が養える。

鯨本

いずれにしてもメリットとデメリットがありますね。そのなかでよりよい学校をつくるためには何が必要でしょうか?

望月

みんなが同じ方向を向くことです。

鯨本

同じ方向を向く?

望月

教育の問題をどうするかを、学校ごとでも、自治体ごとでも、島ごとでも良いのでみんなで同じ方向を向く。「学力をあげよう!」というようなものでも良いですが、学校や保護者や地域で、現状がこうで全国はこうで、「だからこの地域ではこうしたい」……と、みんなで選択し合意すること。そういう話し合いの場が定期的に持たれることも大事です。

鯨本

「みんなの目標」を立てるということですね。

望月

そうです。学校の目標設定に地域が関わっていくこと。学校って子どもに対するサービスを提供している場所・仕組みであって、子どもが育つことがゴールなんです。そこを忘れると、大人同士の変な意地の張り合いになってしまう。「子どもがどのように育つか」が大事なんです。


(お話を聞いた人)

望月 洋佑(もちづき・ようすけ)
野村総合研究所主任研究員(取材当時)。東京大学大学院教育学研究科卒業。シンクタンク研究員として本土および離島などの地域に足を運びながら、プライベードでも島々を訪れる。

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