つくろう、島の未来

2019年05月26日 日曜日

「島々仕事人」は離島地域に携わる仕事人の想いを紹介する企画。今回は、東京を拠点に幅広い分野で活躍するWeb制作会社「LIG(リグ)」が登場。地方創生事業を手掛けるなかで、甑島(こしきじま|鹿児島県)や壱岐島(いきのしま|長崎県)と縁がつながり、離島でのリモートワークや、ゲストハウスの運営を手掛けています。その取り組みや彼らの発信から感じる熱量の高さの理由を探ります。

※この記事は『ritokei』26号(2018年10月発行号)掲載記事です。

文・小野 民 写真・矢郷 桃

お話を聞かせてくれた(左から広報室の中野慧さん、佐々木バージニアさん、経営企画室の田島ららさん

きっかけは 創業者の「自分ごと」

東京に本社を構えるWeb制作会社LIG(リグ)は、本業もさることながら多岐にわたる事業展開で業績を築き、メディア業界では急成長を知られる存在だ。その会社が力を入れていることのひとつに、「地方創生」がある。取り組みの内容を見ると、ベンチャー企業らしい目のつけどころやスピード感、実行力の高さがうかがえる。

お題目だけの地方創生ではない、そんな気概を感じる理由を尋ねると、「もともと地方を盛り上げようと一歩を踏み出したのは、代表取締役の吉原ゴウの地元、長野県信濃町でした。最初は吉原の実家のペンションをLIGとして継ぎ、今は野尻に支社も構えて、10名ほどの社員が野尻で暮らしています」(田島さん)。その動きを知った各地の行政から、地方創生事業の声がかかるようになった。

地域課題を専門に扱うコンサルタントなどではない、個性的なベンチャー企業にアプローチする行政職員は、自ずと「前例に囚われない熱い人」になる。図らずも、事業のひとつであるお試しリモートワーク「どこでもオフィス」の開催地は、熱い島の職員との出会いにより1回目が甑島列島(2016年4月に5日間)、2回目が壱岐島(2017年1月に4日間)になった。

普段のオフィスを離れて、地方でリモートワークをする「どこでもオフィス」では、月間250万人が訪れるという人気ブログを介し「LIGのみんなと働いてみたい人」も募集する。壱岐島開催の呼びかけには、福岡を中心に東京からの一般参加者も合わせて10数人が集合。いつもと違う環境やメンバーで働く魅力は、島に行ってみる動機として、しっかり機能していることを確信したという。

壱岐に恋して探した 自分たちにできること

壱岐島では「どこでもオフィス」後も、継続的な協働が続いている。「壱岐島の方に誘われて島に行った経営陣が、島に恋してしまった。そこから自分たちが島にできることを模索してきました」(田島さん)。

社員が壱岐島に行けば、そこで得たことをブログで発信するのがLIG流だ。「あぁ、壱岐の馬鹿…美味しい食材の宝庫・長崎県壱岐島の魅力がハンパない。」、「まるで気分は億り人……!? 長崎の〇〇通貨を使って壱岐島で豪遊してきた」などのタイトルがついたブログを読むと、エンタメ感満載に壱岐の魅力が伝わってくる。「”情報をシェアしよう”が社員が共有する理念。自分たちが壱岐島を好きになって楽しんだことは、独り占めしたくない。それに、自分たちが地域と共存共栄していければ、僕たちが発信するコンテンツの質も上がり、新たなビジネスにつながることも実感しています」(中野さん)。

LIGと壱岐島の行政との関わりが深まったことで、使われなくなった島の宿をゲストハウスとして再生するプロジェクトも事業に加わった。当時、地方創生事業の壱岐島担当者だった勢古口(せこぐち)光さんは、LIGの社員のまま、妻と東京から移住。築100年の酒蔵を改装したレストランも併設するゲストハウス「LAMP壱岐」を2018年5月にオープンし、現在はその支配人を務める。

宿+コワーキングスペース 地方を盛り上げる可能性

LIGの福利厚生に、長野2カ所と壱岐島にあるゲストハウスへの宿泊費が無料というものがある。さらに社員の合宿に利用するなら交通費も支給。田島さんはこの制度を利用して今年6月、経営企画室の合宿を壱岐島で行った。「普段はメンバーそれぞれが別のプロジェクトを走らせているので、しっかりと話し合う機会は貴重。日常とは違う素晴らしい環境のなかでできたことで、すごく建設的な話ができた」と言う。

「ゲストハウスは、一般のお客さんに利用してもらいながら経営する、新しい形の会社の保養所のようなものかも」と中野さん。利用者を一般に広げて経営がうまくいけば、継続性も担保される。長野でのゲストハウスの運営も合わせて考えると、ゲストハウスとコワーキングスペースの組み合わせが、集客においての魅力になることが分かってきたという。壱岐島のゲストハウスにワークスペースはないものの、近所の公民館やカフェがその役割を果たしている。

「LAMP壱岐」を切り盛りする勢古口さんは、「1年を通して暮らしてみて、どんな食材が調達できるか、ここに必要なものはなにか見定めていく時期」だと現在を語る。「ビジネスとしても成功させるためには、自分たちのやり方に固執しすぎず、島の人たちが望んでいるものを形にしていくことも大事。『LIGと一緒にやりたい』と言ってくれた島の人たちが、今も『いつでも声をかけてね』と言ってくれる。それが僕らがここで働く、一番の原動力です」。


プロフィール/
格式会社LIG(リグ)
2007年創業のWeb制作会社。社員は140名を超え、事業領域も教育、地方創生、飲食業など多岐にわたる。自社の取り組みや周辺情報を、ユニークな視点で発信するブログが人気で、フェクスブックのフォロワーは5万8000人を超える。

LAMP壱岐
2018年5月にオープンした、LIGが運営するゲストハウス。個室タイプの部屋もあり、ファミリーでの宿泊も可能。築90年の旅館をリノベーションし、地元の食材をふんだんに使った「Bistro LAMP」も併設。

【関連サイト】
格式会社LIG
LAMP壱岐

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』島々仕事人

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