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【特集|在島WORK】漁業の島からIT企業に務める島のお母さん 宗像大島 成田由子さん|在島ワーカー

島暮らしを選び、島に仕事を持ち込んだ「在島ワーカー」とはどんな人か? 7つの島に暮らす在島ワーカーに、仕事や暮らしについて聞きました。取材はすべてZOOMやSkypeなどのビデオカンファレンス(テレビ電話)を使用しました。『季刊リトケイ』25号特集「仕事はネットで。暮らしは島で。島の新しい働き方 在島WORK」連動記事です。

漁業の島からIT企業に務める島のお母さん

2017年7月に「『神宿る島』宗像・沖ノ島(おきのしま|福岡県)と関連遺産群」としてユネスコの世界遺産に登録された宗像市の離島・大島(おおしま|福岡県)。4世紀以降、日本列島と朝鮮半島の間で行われていた交易の証が残り、航海の安全を願う古代祭祀が500年以上受け継がれてきた沖ノ島とともに、その歴史的価値に注目が集まっている。

年に1度、行われる神事では、100隻を超える大島の漁船群が大島から沖ノ島までを航行。勇壮な大漁旗がはためく人口約600人の漁業の島で、成田由子さんはただ一人、ITエンジニアとして働いている。

「タクシーは1台しかないけど、船は174隻あります」という大島は、九州本土から船で約30分。成田さんは結婚を機に夫が暮らす大島に居を移した。「結婚の話が出たとき、住む場所は島がいいねという話になりました。でも、仕事がないと困る。そこで会社に相談してみよう、ダメだったらまた考えようと、試しに会社に打診してみたんです」(成田さん)。

すると会社側はOK。週1回だけは片道2時間をかけて福岡市内のオフィスに通勤するが、そのほかは大島の自宅からリモートで働く生活が始まった。

「タクシーは1台しかないけど、船は174隻あります」という大島だけに、成田さんの夫も島で漁業を営んでいる

通勤時間は0分。インターネット上で使えるアプリケーション開発を担当する成田さんは、自宅のパソコンから福岡や東京、海外支店にいる仲間とネット上でやりとりしながら、有給管理などの社内システムを開発している。

いわゆるIT企業である成田さんの所属会社では、社内のコミュニケーションがネット上に集約されている。

「同じプロジェクトチームでもいろんな拠点にちらばっているので、隣の席に座っていても仕事のやりとりはチャットです」という日々の仕事は、始業時にチャットで「Hello」と入力し、勤務開始を会社に知らせることに始まる。

その後、毎朝行われるテレビ電話のオンラインミーティングで20分ほど業務の申し送りを行い、その後はシステム開発に集中。退勤時にはチャットに「Bye」と入力し、その日の仕事が終了する。

リモートワークでも円滑に仕事を進めるにはいくつかのポイントがある。まず、勤務時間中は、チャット上で同僚とのコミュニケーションが続くため、チャットの呼びかけに素早く反応できるよう、パソコンの音量をオンにし、デスクトップに通知が表示されるよう設定。

さらに、コミュニケーションはほぼ「文章」のため、文章の書き方や説明の仕方にも注意を払う。「どっちにも受け取れるような書き方はしないこと、口頭で説明する必要がないように資料を書くことなどは、リモートワークになって気をつけるようになりました」(成田さん)。

また、パソコン上で描いた図をリアルタイムで同僚に共有できるアプリケーション「Cacoo(カクー)」や、業務タスクやデータを管理・共有できるプロジェクト管理システムの「Backlog(バックログ)」などを活用している。

リモートワーカーとしての工夫とIT技術により、島からエンジニアの仕事に従事できている成田さんだが、肝心の通信環境はまだまだ悩ましい。大島は現在、光回線が通ってなくADSL回線のみ。現在は、モバイルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリングを活用しているが、大きなデータの送受信は本土の会社へ出社したときに行っている。

大島はADSL回線のため、スマートフォンのテザリング等を活用し、大きなデータの送受信は本土の会社へ出社したときに行う

業務上、一日中パソコンに向かうためストレスがたまることもある。しかし、ここは島。窓の外に目を移せばおだやかな島の風景が広がり、野良猫があくびをしている。

成田さんは「以前は忙しく感じて焦ることもありましたが、島でリモートワークになってそういうことが減り、怒っていると損だと思うようになりました」と話す。

成田さんは今年のはじめに1児の母となり、しばらくの産休期間に入った。今は生後半年になる子どもを抱きながら、島の奥さんたちと一緒に「しまカフェ」という団体をつくり、地域おこし活動を楽しんでいる。

島に暮らすひとりのお母さんであり、バリバリのITエンジニアでもある成田さんは「しまカフェの活動でも物事が一気に進んでいるので、プロジェクト管理システムを紹介してみたものの、みんなスマホしか使わないから難しいらしくて」と笑った。


ある1日のスケジュール/
08:00 起床
09:00 仕事
12:00 昼食
13:00 仕事
18:00 夕食
20:00 団らんや家事など
24:00 就寝

島データ/
大島(福岡県宗像市)
人口662人(H30.6月時点)
面積7.21km²

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『季刊ritokei(リトケイ)』25号「仕事はネットで暮らしは島で 在島WORK」特集連動記事

『季刊ritokei(リトケイ)』25号「「仕事はネットで暮らしは島で 在島WORK」特集掲載記事をはじめ、紙面にて紹介した記事のノーカット版等を、有人離島専門ウェブメディア『離島経済新聞』にて公開しています。

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