つくろう、島の未来

2018年11月19日 月曜日

隠岐郡海士町(あまちょう|島根県)は、離島という枠を超えて、全国の地域づくりのトップランナーとしても知られる。財政破綻の危機から全国の熱視線を集める地域づくりの先駆者となった海士町の島づくりについて取材した。(写真提供:海士町)
※この記事は、『季刊ritokei』23号(2018年2月下旬発行)「注目の島づくり特集」連動記事です。
(記事前編はこちら)

島の環境を活かした教育で高校の魅力化

隠岐島前高校は全学年が1クラスになるなど生徒数が減少。高校入学で若者が島を出たまま戻らないことや、通学の負担を避けて一家が島を離れる可能性もあるだけに、同高の存続は島前地域の持続のためにも不可欠だった。

この課題に対し、町は2008年から「島前高校魅力化プロジェクト(※)」を開始。離島の環境を活かした教育を打ち出すとともに、島外から高校生を受け入れる「島留学」を推進した結果、留学生の増加に加えて島内での進学率も向上し、2012年には2クラス化が実現した。

※島前高校魅力化プロジェクト……地域を学ぶ「地域学」や、生徒の夢を探究するキャリア教育など独自プログラムをつくり、島外留学生も積極的に募集。市町村が公立高校の魅力化を図るプロジェクトとして全国に広がっている。

世代交代の時期を迎えて

数々の課題解決に取り組む海士町の強い意識は、地域に活躍の場を求める移住者の呼び水になり、2014年には人口がプラスに転じるなど、人口減少にも歯止めがかかりはじめた(※)。

※海士町の人口は2013年の2,297人に対し、2014年は2,368人と増加。

十数年に渡って、力強い島づくりを続けてきた同町は、いま、世代交代という新たな課題に直面している。これまで地域づくりを担った世代の定年が近づき、山内町長も高齢になった。

同町職員の濱中香理さんは「若い世代からは『これ以上何ができるか』『もういいのでは』との声も聞こえてきます」と話す。しかし、成功事例が続いたとしても、地域の未来が約束されたわけではない。町は世代交代後の未来を見据え、若手を対象とする人づくりにも着手している。

1976年生まれの濱中さんは、島のこれからを担う世代で、現在は島前高校から始まった魅力化の流れを小中学校や地域にも広げていきたいと考えている。「これまで職場の上司の頑張る姿に刺激を受けてきました。みんなで悩みもがきながらも、前のめりになって課題に挑戦した方が、よりパワーが出るし何より楽しいと感じています」と濱中さんは意気込む。

「ないものはない(ここにないものはなくてもいい・大事なことはすべてここにある)」をキーワードとし、地域の課題を資源と捉え挑戦を続ける。ひとつの課題の解決が、新たな課題の発見につながる。このサイクルを世代間で共有し、海士町は未来に向かう。

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』23号 「島づくり」特集連動記事

現在、日本では「東京一極集中」「消滅可能性地域」「地方創生」といった言葉が踊り、離島地域に限らずさまざまな地域で振興策が促されている。そこで『季刊リトケイ』23号では島々の地域振興事情を特集。それぞれの島で人々が健やかに暮らしていくためには、どんな考えを持ち、何を実行すべきか。読者・有識者・島づくりの実践者の声をもとに、愛する島の未来を築く島づくりのヒントを集めました。特集記事はじめ紙面にて紹介した記事のノーカット版等を、有人離島専門ウェブメディア『離島経済新聞』にて公開しています。

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