つくろう、島の未来

2018年12月18日 火曜日

三河湾の離島・佐久島(さくしま|愛知県)。いまでこそ「アートの島」として知られ、人口約230人の島で年間10万人以上もの交流人口を生む背景には、20年以上にわたる島の住民と行政との連携があった。(写真提供:西尾市)
※この記事は、『季刊ritokei』23号(2018年2月下旬発行)「注目の島づくり特集」連動記事です。

島の自然や文化を活かしアートで活性化

1995年、国土庁(現国土交通省)が設置した各界で活躍する女性のみで構成する委員会「良い風が吹く島が好き女性委員会」が佐久島を訪れ、「島の自然が地域資源になる」と提言。「島には何もない」と捉えていた島の住民は驚くとともに、島の自然や文化をベースにした芸術活動による活性化構想を打ち出す。その実現に向け、1996年に設立されたのが、島の住民で構成する「佐久島を美しくつくる会」だった。

同会の鈴木喜代司会長は佐久島で生まれ、高校卒業後も島に残った。1950年代に1,600人以上であった人口が、1995年には400人以下に減少するなか、危機感を抱き、「アートで活性化を」と意気込んだ。

島内には、島の自然や伝統文化と調和する「おひるねハウス(※)」などのアート作品が常設展示され、訪れる人は思い思いに過ごし、その様子がSNSなどを通じて広まる。

※佐久島の石垣(しがけ)海岸に設置されているアート作品。人気アニメに描かれたことでも話題を集め、人気観光スポットとなっている

また、潮風対策でかつては家の壁にコールタールが塗られていた黒壁の集落の景観を保全するため、島に愛着を抱き守ろうとする約100人のボランティアが島外から参加。こうした人々がリピーターにつながる好循環を生んでいる。

島づくりに関わる行政窓口を一本化

佐久島の島づくりには、2007年に当時の一色町に置かれた「窓口」の存在も欠かせない。一部離島(※)である佐久島では、それまで島の観光や渡船、土木などに関する相談を行政に持ち掛ける際に、各担当課を回る必要を強いられていた。

※西尾市に属する佐久島のように、ひとつの自治体が本土地域と離島地域にまたがり構成される場合の離島地域側の呼称

そこで、縦割りの状況を改善しようと、同町は「佐久島振興室」を設置して窓口を一本化。2012年に合併して西尾市になった後も、同振興課として引き継がれている。

定期航路の利用者が増え黒字路線に

地道な活動が実を結び、2008年頃から本土と佐久島間の渡船利用者が右肩上がりに増え始め、2015年には10万人を突破。全国的にもめずらしい黒字路線に成長した。

順風満帆に見える佐久島の活動だが、同会の発足後5年間は単発のイベント開催にとどまり、島にアートが根付かず、交流人口も増えなかった。そこで事業パートナーを東京の企業から地元の企業に変更し、通年で実施する体験型のアート事業を展開したことも転機になったと鈴木会長は振り返る。

今では島の住民全員が同会の会員となり、島を訪れる人々を受け入れている。


【関連サイト】
愛知県西尾市一色町佐久島公式ホームページ

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』23号 「島づくり」特集連動記事

現在、日本では「東京一極集中」「消滅可能性地域」「地方創生」といった言葉が踊り、離島地域に限らずさまざまな地域で振興策が促されている。そこで『季刊リトケイ』23号では島々の地域振興事情を特集。それぞれの島で人々が健やかに暮らしていくためには、どんな考えを持ち、何を実行すべきか。読者・有識者・島づくりの実践者の声をもとに、愛する島の未来を築く島づくりのヒントを集めました。特集記事はじめ紙面にて紹介した記事のノーカット版等を、有人離島専門ウェブメディア『離島経済新聞』にて公開しています。

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