つくろう、島の未来

2018年12月18日 火曜日

瀬戸内海の周防大島諸島(すおうおおしましょとう|山口県)の一つ、浮島(うかしま|山口県)はカタクチイワシ漁が盛んな「いりこの島」として知られる。ふるさとの島の水産物を原料に特産品を開発し、伝統産業を下支えする新村一成さんに話を聞いた。(写真提供:株式会社オイシーフーズ)
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※この記事は、『季刊ritokei』23号(2018年2月下旬発行)「注目の島づくり特集」連動記事です。

末長く漁を続けるため独自の取り決めを守る、浮島のイワシ漁

伝統的な食材を現代生活に合った新商品として開発

両親がいりこの製造・販売業を営む新村さんは、消費者のライフスタイルの変化などからくる煮干しの需要減や、環境の悪化による魚の減少など、島の漁業の衰退を身近に感じながら育ったという。

カタクチイワシは類似したサイズの個体で群れを作る習性がある。いりこの製造に適さない規格外のイワシは廃棄処分もやむを得ないため、浮島では大きなイワシが回遊する時期は漁を休業。2週間ほど漁に出られないこともしばしばあった。

浮島の水産物を使い、現代生活に合う新たな加工品をつくりたいと考えた新村さんは、2011年にオイシーフーズを起業。いりこ製造に向かないサイズが大きめのカタクチイワシを油で煮て滅菌し、油漬けにして保存性を高めた「オイルサーディン」を開発した。

浮島産カタクチイワシを使用し、エクストラオリーブオイルと菜種油に漬け込んだ「オイルサーディン」は、素材の旨味を活かし塩分を控えた味付け。保存料や着色料などを加えず、無添加にこだわった。

2011年12月から周防大島本島(屋代島)の道の駅で販売を始めた「オイルサーディン」は、2013年に一般社団法人瀬戸内観光推進機構の「瀬戸内ブランド」に登録され、大手百貨店のカタログギフトに取り扱われるなど、順調に販路を拡大している。

浮島で親しまれてきたカタクチイワシに新たな魅力を吹き込んだ新商品に、長年いりこ製造に携わってきた新村さんの両親は、「最初は『そんなもの売れっこない』と懐疑的でした」と新村さんは振り返る。しかし、「オイルサーディン」の活躍を目にし、今では新しい商品のアイデアを提案するなど積極的に応援してくれているという。

若者が手に取りやすいパッケージや業務用展開も検討

左:「浮島いりこ」/右:「浮島あかもく」

「オイルサーディン」は1瓶750円(税込)で、自社ウェブサイトでの通信販売や、周防大島町内のスーパーなどでも販売されている。「高級品として売り出した方が良いとの声もいただきますが、やっぱり地元の方にも食べていただきたいので」と、新村さん。近隣のレストランなどでも使ってもらえるよう、業務用の商品展開も検討している。

「オイルサーディン」のほかにも、同社では伝統的ないりこ商品のパッケージを若者が手にしやすいように工夫。これまで利活用が進んでいなかった海藻にも注目し、近年、健康食品として人気が出ている「アカモク」は、浮島では食べる習慣がなかったが、新たに「浮島あかもく」として商品化した。

新村さんは、「浮島ではアオサも取れるし、天然モズクの繁殖地もある。新鮮な海藻に付加価値をつけて、少量でも出荷できる仕組みづくりができないか」と構想している。島の漁業を下支えし、新たな生業づくりにもつながる挑戦が続く。

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』23号 「島づくり」特集連動記事

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