つくろう、島の未来

2018年12月11日 火曜日

鹿児島大学教育学部と与論島(よろんじま|鹿児島県)の小・中・高校が、情報通信技術(ICT)を活用した遠隔授業の研究に取り組んでいる。教育学部で学ぶ大学生と島の子どもたちが交流する遠隔授業は、双方にどんな効果をもたらしているのか。自身も与論島の出身という鹿児島大学の原田義則准教授に話を聞いた。

今年12月に実施された与論中学校と鹿児島大学の遠隔授業研究の様子(写真提供:鹿児島大学)

中学生がインターネットを通じて島外のプロに取材

奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)最南端の与論島は、沖縄本島の北23キロメートルに位置する。面積20.58平行キロメートルの隆起サンゴ礁の島に5,309人(※)が暮らしている。

※自治体最新統計

与論町では鹿児島大学教育学部と連携し、2015年から情報通信技術(ICT)を活用した小・中学校への遠隔授業研究や大学教員による中学・高校への出前授業などに取り組んでいる。ICTによって島が抱える教育環境のデメリットを解消し、大学生らの離島地域に対する理解を深めることが目的だ。

この一環で、2016年から与論島の中学生を対象に実施されている遠隔授業研究では、鹿児島県の地元紙に掲載された社会で活躍する様々な職業人の中から取材対象を選び、取材を実施。

与論島と鹿児島市内の大学教室をテレビ会議システムで結び、インターネットを通じて島の中学生らが鹿児島市内で活躍する新聞記者や動物園の飼育員、プロバスケットボール選手、ホテルレストランの料理人、テレビ局アナウンサーなどへ「職場インタビュー」を行い、レポートを制作した。

大学のない与論島の中学生からは「自分も大学に行ってみたくなった」との声があがるなど、島外の社会人との交流で視野が広がり、将来の進学先や職業のイメージが描きやすくなる効果がみられたという。

教育学部の学生が島の教育環境に触れる場に

鹿児島大学と実施された与論中学校での遠隔授業研究の様子(写真提供:与論町教育委員会)

島と大学での遠隔教育は、本土側の大学生が離島地域の学校教育をポジティブに捉え、関心を高める機会にもなっている。

31の有人離島に小学校511校・中学校220校・高校71校(※)を抱える鹿児島県では、教職員が離島地域の学校に赴任する機会が多く、2つ以上の学年をひとつにした複式学級での指導など、地域特有の教育環境に対応できる人材が求められている。

※休校中の学校を除く

一方、鹿児島大学では大学の付属校などでしか教育実習が行われておらず、学生らが離島地域の教育現場に触れる機会が限られていた。

そこで、今年10月と11月に実施された鹿児島大学と与論町の小・中学校間の遠隔授業研究では、与論島での授業の様子をテレビ会議システムで鹿児島大学に配信。授業終了後は、与論島の学校教諭らと鹿児島大学教育学部国語教育講座の大学教員や教育学部で学ぶ学生らとの間で意見交換も行われた。

遠隔授業研究を通じ、のびのびと学ぶ島の子どもたちの姿を目にした学生らは「学校の雰囲気が良かった」「島の学校で教えてみたい」と話した。

島と教育への思いを形に

遠隔授業研究を統括する鹿児島大学の原田義則准教授は、自身も与論島の出身だ。「島の子どもたちは温かな人の輪の中で心豊かに育つ一面、島の外に出た時に社会とのギャップに苦しむケースも多い」と話す。

島の小さなコミュニティの中で学び育つことの良さも苦しさも知る原田准教授にとって、一連の取り組みは自身の島と教育への思いを形にしたものでもある。

原田准教授は「遠隔授業研究は、島の子どもたちにとっては将来の巣立ちに備えて島の外の世界に触れる機会。その経験はいつか生きる時が来ます。教育を学ぶ学生たちにとっては、離島地域の教育について知り、深く考える学びの場となります。ゆくゆくは県内の他の島にも広げていきたい」と語った。

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