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寄稿コラム

【島Column】島の暮らしとICT#09 島の祭りとICT

スマホやパソコンなど誰でも簡単に使えるインターネットが身近になった今、ICTという「情報と通信の技術」があることで、島の暮らしがどのように変わるのか? ICTをフル活用しながら奄美大島と本土の2拠点生活を行う、勝眞一郎教授の連載コラムです。

「祭り」は何のために行われているのか

島の祭りと言えば、本サイトの「島Column」に連載されている写真家黒岩正和さんの『百島百祭』。日本中の様々な島の祭りについて、祭りの由来から、準備のシーン、そして祭り当日の人々の様子、が美しい写真とともに描かれています。

島に限らず、古来より祭りは「豊穣への感謝」や「祈り」や「宗教的な祭礼の一部」などとして各地で受け継がれてきました。「浜下り」のように沖縄や奄美地方に限らず広く分布している祭りもあれば、ある地域だけに続く祭りも多くあります。

祭りには、「行う場(地域)」と「行う人(実施者)」の条件が必要です。近年では人口減少と少子高齢化により、祭り自体が実施できなくなっている地域が増えてきていますが、祭りは急にはなくなりません。簡素化されたり、1年おきになったりしながら、徐々になくなっています。

その兆候は、地域で見かける子どもたちの姿に現れます。まず、中学校が統廃合され、小学校が統廃合され、地域から子どもたちが少なくなります。地域の人々が集う場所でもある学校の校庭の利用が減り、集落から子どもたちの元気な声が聞こえなくなってきます。

実際は、子どもたちが減る前に、仕事を探すなどの理由で大人たちが土地を離れていきます。そうすると、直接的に祭りの担い手が足りなくなります。そして次の担い手である子どもたちもいなくなり、地域から一つ、また一つと祭りが減っていきます。

今回はそうした島の祭りにおけるICTの利用について考えてみたいと思います。

実施者と見学者のバランス

祭りには、地域の関係者だけでひっそりと行われる祭りがあります。そんな祭りの多くは、現在進行形で地域に住んでいる人だけでなく、祭りにあわせて帰省した出身者も参加し、自分のルーツを確認します。私が暮らす奄美大島にはたくさんの島唄や踊りがありますが、祭りの場は、小さいころから慣れ親しみ、体が覚えている唄や踊りを思い出し、地元の料理や酒を楽しめるような場でもあります。

近年、こうした地域のお祭りは、観光資源としても捉えられるようになり、ツアーを組んで見学する人たちも増えてきました。観光客が増え過ぎると祭りがショーと化していくという懸念も耳にします。

そうした祭りの主催者側は、その役割として、地域の伝統を楽しみ、つなぐだけでなく、見学者に対するルールを決めることも大切になってきているようです。

実施者と見学者のバランス

私がいる奄美大島北部の集落では、祭りが近くなると夜遅くまでチヂン(太鼓)の音が響きます。従来、祭りの多くは先輩からの「口伝」で継承されるものがほとんどでした。祭りに備えて、仕事が終わってから集会所に集まり、講師役になる長老の指導を受けながら何日も練習をするのが通常です。

祭りの当日は太鼓や三味線などはライブで演奏しますが、練習は録音された音源を使うこともあります。ここでは、以前のようなカセットテープから、徐々にデジタル音源に変わりつつあります。

奄美大島には、旧暦8月に踊られる「八月踊り」という踊りだけでも20曲余りあるといわれています。集落によって唄も踊りも微妙に異なるため、音源や踊りのデジタルアーカイブは重要です。現在、奄美大島ではセントラル楽器という地元の音楽屋さんが、地域ごとの音源を収録し、DVDにして販売しています。

ICT分野から、祭りの継承に有力視されるのは、「モーション・キャプチャー」と「VR(バーチャル・リアリティ)」です。

モーション・キャプチャーは、達人の可動部にマーカーを付け、動きをモニターします。映像として再現できるほか、将来的には初心者の人に達人の動きをトレースするような支援ロボットも今後できてくるでしょう。

VRは、大人数で集まることができない場合に有効です。踊りを覚える際は、人の振りを見ながら覚えることが多いと思いますがVRだと、まるで踊りの中に自分がいるような感覚になり、周りの人の踊りを見ながら体を動かすことができます。簡単なものは、「奄美パーク」の中に設置されています。クロマキーという技術を使って、ブースの中で撮影されたあなたの姿と、事前に撮影された島の皆さんの踊りの様子を合成し、まるで一緒に踊っているかのような体験をすることができます。奄美にお越しの際は、是非試してみてください。

しかし、いかにICTを使って祭りをアーカイブしても、受け継ぐ人たちがいなければ祭りは消えてしまいます。祭りに込められたメッセージやストーリーを貴重な資産として記録に残し、少しでも長く継続するのが、今のわたしたちの役割です。

これからの島の祭り

人口の減少は止めようがなく、その速度をどう遅くするかが現在の地方の課題です。祭りも、地元の人たちだけで担えなくなった場合は、隣町との協力や観光客の参加も必要とされるでしょう。

その際に重要なのは、祭りのクオリティです。「守るべきもの」のクオリティが低下すると、参加者のモチベーションも観客の興味もなくなり、一気に祭りは消滅します。体験を重視する観光客には、祭りの歴史の学習から、厳しいトレーニングまでをメニュー化し提供することで人気が出てくる可能性があります。

島の祭りは、単なるイベントではなく、その地域の風土と歴史を積み重ねてきた貴重な資産です。時代に合った祭りの継承の手助けとしてICTの活用を積極的に進めていきましょう。

離島経済新聞 目次

【連載】島の暮らしとICT

ICT(Information and Communication Technology)技術で、島の暮らしはどう変化してきて、これからどう変化するのかを探る、サイバー大学教授の島×ICTコラム。

勝眞一郎(かつ・しんいちろう)
1964年生。奄美市名瀬出身。NPO法人離島経済新聞社理事、サイバー大学IT総合学部教授、奄美市産業創出プロデューサー、バローレ総合研究所代表。著書に『カレーで学ぶプロジェクトマネジメント』。現在は奄美大島と神奈川県の藤沢の二地域居住。

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