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寄稿コラム

【島Column】屋久島の小さな商い、小さな喜び #14

鹿児島県大隅半島の南に浮かぶ屋久島へUターンして、コーヒーショップを営む島記者 高田みかこが、島ならではの小さな商いの話と季節のたよりをお届けする連載コラム。今回は旅人と移住者とローカルが交流する屋久島の商店街のお話。

#14 昭和の商店街に新風を吹き込むリノベーションレストラン

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高齢化や後継者不足、モータリゼーションの進展とともに、町なかの商店街にシャッターが目立つようになるのは、都会も島も同じく。屋久島で最も人口の多い集落、宮之浦の商店街もかつての賑わいの面影を残しながら、ずいぶんと静かになってきました。

そんななか、若い世代がはじめた店が、静かな商店街に新風を吹き込んでいます。

旬をいただく、地魚と島野菜

幹線道路と益救(やく)神社をつなぐあきんど通りに、今夏オープンしたレストランパノラマ。

シンプルなものほど、技術の差が出るというけれど、ここでいただくお刺身は衝撃。我が家の普段の食卓にのぼるそれとは、まるで別もの。エッジのピンと立ったお刺身は、これ以上もこれ以下もないという、それぞれの食材にベストの大きさに切りそろえられ、よく手入れされた包丁を使っているのが伝わってきます。

鯖の皮目が軽く炙られていたり、揚げたエビの頭が添えられていたり、つまの飾り切りも目に鮮やかで、食べ慣れた地魚も別物のように感じられるのです。

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「そのまんま野菜」なるひと皿も、生の野菜をごま味噌やわさび味噌にディップして食べるだけの料理ですが、食材の選び方や切り方が絶妙。皮はむく? むかない? 繊維にそう? 断ち切る? それとも丸のまま? 生の野菜でも、扱い方ひとつで無限のバリエーションが生まれてきます。

きゅうりや人参といった定番に混じって、万願寺唐辛子や西洋カボチャなど、生で食べるのははじめて、という野菜も並んでいて、わくわくさせられます。

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メニューに並ぶのは、ポテトピザやポキ丼といった多国籍料理ですが、この店の魅力は、割烹や寿司店で修行したという、オーナー店主トシさんの包丁技が感じられる料理ではないでしょうか。

どっしりとした鉄筋コンクリートの建物は、地元民に親しまれた荒田商店という大きなよろずやでした。コンパネが普及する以前、杉の木目が残るコンクリート地が、築50年近い歴史を物語っています。

店名の由来にもなったという、通りいっぱいに開かれたガラス張りの間口を行き交う人びと。知り合いに手を振ったり、ちょこっと入ってきて、二言三言交わして去っていく人など、商店街ならではの雰囲気が魅力的。

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休業する店もチラホラ見受けられますが、銀行や菓子店、酒店や鮮魚店、居酒屋やスナックがひしめきあう通り。近年では、徒歩圏に素泊り民宿も増え、レンタカーを借りずとも、便利に旅を楽しめるエリアとして、再び注目を集めています。

島で出会って、夫婦になって

オーナーのトシさんとエリさんご夫婦は、別々に島にやってきて、出会って、家族になって、この店をオープンさせました。「去年の今頃は、物件探しを兼ねて、宮之浦の飲食店を食べ歩いていたんです」と、怒濤の日々を振り返ります。

最初に島にやってきたのはエリさん。ホテル内のサロン立ち上げのためのスタッフとして2カ月の予定で滞在。「元々登山が好きだったこともあって」なんだか気に入ってしまって、そのまま延長することに。

トシさんもまた、別のホテルのスタッフとして、この地を踏みました。和食の料理人として1年ほど勤務したのち、島の南東、安房(あんぼう)集落の居酒屋「じぃじ家」のリニューアルオープンの料理長として転職。この店で、サロンスタッフと掛け持ちで働いていたエリさんと出会いました。

料理人という職業柄、いつか自分の店を持つイメージは抱いていましたが、この頃から、屋久島で店を持とうと思いはじめたといいます。3年の契約満了を前に、安房から離れた宮之浦で物件を探しはじめ、空き店舗になっていた荒田商店に行き当たりました。

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そこからは大工仕事の日々。包丁を工具に持ち替え、友人大工たちとともに3カ月ほどかけてリノベーションを成し遂げました。白い壁に広いファサード、明るく生まれかわった店内ですが、床や一部天井は当時のまま。今では入手困難な昭和のガラス戸も内装に活かされて、古いものと新しいものが自然に調和しています。

この秋には、同じ通りにHair&Nail Salon QUeeNがオープン。こちらも長く空き店舗だった美容室が舞台。島にUターンした美容師、島出身の夫とともに引っ越してきたネイリストとふたりの女性が立ち上げる店とのこと。島ではじめてのヘアとネイルを併設したサロンです。

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古いものと新しいものが混じり合い、旅人と移住者とローカルが交流する商店街。新しい文化が生まれる雰囲気に満ちています。

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