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寄稿コラム

【島Column】屋久島の小さな商い、小さな喜び #05

鹿児島県大隅半島の南に浮かぶ屋久島。周囲約130kmの円い島の、山と川と海が接するわずかな平地に、ひしめき合って暮らしています。Uターンして、自らもコーヒーショップを営む島記者が、島ならではの小さな商いの話と季節のたよりを届けます。

大漁と海の安全を願う浜まつり

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7月の海の日の前後に「浜まつり」なる一湊の祭りが催されました。
旧暦の六月三日に行われていた祭りのなごりで、豊漁を海辺のえびす様に願い、かつては若い漁師が相撲を奉納していたと聞きます。

 

この日は、どの船も鮮やかな大漁旗を掲げ、祭りに集う人々を乗せて一湊湾をパレードします。ひと目で見渡せる湾の中を、飾り付けられた船が一列に進む勇壮な姿はとてもフォトジェニック。パレードのあとは、演芸大会やスイカの早食い競争、子ども向けの鯖のつかみ取り大会、運良く水揚げがあれば、魚の直売などのイベントが用意されています。射的なヨーヨー釣りも地元団体が運営しているだけあって、とっても良心的な値段。地元民による地元民のための祭り。賑やかなことが大好きな漁場の人々の素顔が少し垣間みられる、そんな祭りなのです。

 

そして、公民館のブースにはできたてホヤホヤの冊子。
「ここには書けないことのほうが、百万倍おもしろい」という波瀾万丈の人生を送ってきた林 益人(ますと)前区長が、長年書き溜めてきた文章をまとめたものです。その名も『一湊百年』。御歳89を迎えた益人おじが、漁業、宗教、大火、水害、戦争、自らの体験と見聞きした知識を織り交ぜながら、一湊の百年を綴っています。そして光栄にも私はこの回顧録の出版を手伝う機会に恵まれたのでした。

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各家庭が飛魚100匹を積み立てて建立した尋常高等小学校、青年の下宿制度「寝宿(ねやど)」、隠れ念仏の一種「細布講」の指導者でもあった宗教家是枝千亀女のこと、初めて知る一湊の歴史に、失われつつあるものの大きさを噛み締める日々でした。

 

島では、集落ごとに方言があり、「顔が違う」「食べ物が違う」といわれるほど、各々の文化をもっています。とはいえ、この100年で急速に独自性は薄まり、私たちの世代で、完璧な方言を使いこなせる人はいないのではないでしょうか。

 

‏港町ノスタルジア

屋久島というと、苔むす森や屋久杉をイメージする方が多いのではないかと思いますが、先史からヒトの暮らす島、町を歩けば、観光客向けに適正化されていない、個性豊かな島の姿を少しだけ覗くことができます。今回はこの『一湊百年』片手にその舞台となる集落をぐるり、ノスタルジックな町歩きをご案内。

 

まずは、漁港に車を停め、水揚げ場隣りの公民館で、「おいらぶ一湊てくてくMAP」と『一湊百年』を入手。町のシンボル赤灯台を目指します。

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町歩きのポイントは、会う人に必ずあいさつすること。顔見知りばかりに囲まれて暮らしているので、見知らぬ人に不安を覚える高齢者もいるのです。念のため。

 

途中、石段の上に祀られた「えびすさま」にお参り。堤防から海を覗くと、港内にもさまざまな魚が泳いでいます。クラゲやイカ、運がよければ大きな海亀まで。灯台は爪ほどの朱色のタイルで貼られていて、その色の濃淡が独特の美しさを生んでいます。製氷施設の隣りの公衆トイレは、船をイメージしたちょっとしゃれた作り。新しく清潔です。

 

港町だけに、猫もたくさん歩いています。屋久島の猫はスリムで俊敏。警戒心が強いので、なかなかカメラのフレームには収まってくれません。ピントが合うのは、コンクリートに遺された足跡くらい。

 

ソウルフードは鯖節とつきあげ

港から川をさかのぼるように左岸を。河口ではボラのジャンプや、渡り鳥が羽を休める姿がみられます。県道でもある一湊橋から岡橋、稚児見橋へと続く道は、島でも珍しい土の道。春は桜、初夏はツツジ、季節ごとの変化が楽しい散歩道です。

 

お腹が空いたら、ローカルな雰囲気満点の「なっちゃん食堂」で焼き飯を。西日本ではおなじみの炒めごはんです。「丸市ストアー」や「かねなか商店」でパック入りのお惣菜を買って、海辺や川辺、町なかの大きなガジュマルの木の下のベンチでのんびりいただくのも楽しいかもしれません。

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お惣菜では、「つきあげ」と呼ばれる青魚のすり身を揚げたものが、定番。そのままおかずにするのはもちろん、のり巻きやちらし寿司の具にも使われています。もったりした砂糖入りの衣が特徴の野菜の天ぷらや、塩の効いた鯖のフライ、鯖節をまぶした塩らっきょうもオススメ。つきあげの元であるすり身や地魚の干物は、それぞれの店で製造されたものを買うこともできます。

 

屋久島の伝統食品、鯖節も集落に3軒ある工場で直接買うことができます。
実は、一般的に「鯖節」と呼ばれているものと、島で「鯖節」と呼ばれているものは、同じではありません。関東のそば店などに出荷されている「鯖節」こと鯖の本枯節は、島の広葉樹の薪で燻され、かび付けと天日干しを繰り返し熟成されます。

 

このかび付け前に、油分が多く本枯節に不向きなものを選り分け、地元で消費してきました。島外でいうところの鯖の荒節。こちらは、出汁を取るのはもちろん、ほぐしたものを塩らっきょうや豆腐にかけていただきます。

 

どちらも山の恵みと海の恵みを凝縮した、島の名物です。

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おやつには「平海製菓」へ。
郷土菓子の製造がメインですが、パンも人気。以前、わがコーヒーショップでトーストをメニューに載せていた時は、「どこのパンですか?」とたびたび訊かれたものです。しっとりほの甘い独特の味わいは、どこにも似ていない特別な味。

 

お土産には、自家農園の紫芋やヨモギを使った和菓子を。タンカン果汁たっぷりのブロック黒砂糖も評判です。

 

集落内の宿泊施設は2軒。
創業百年を数える風情ある建物の「花屋旅館」と、大手旅行予約サイトのクチコミで高評価を得ている民宿「湊楽(そら)」。どちらも地元の魚介類をふんだんに使った料理が評判。「願船寺」の鐘を合図に、朝ご飯前、潮風を浴びながら、活気あふれる漁港を歩く。
朝の港町には思いがけない宝物が転がっているかもしれません。

 

いかがでしたか?屋久島にお越しの際は、ぜひ、「おいらぶ一湊てくてくMAP」と『一湊百年』を手に入れて、個性豊かな町歩きを楽しんでみてくださいね。

 

 

(つづく)

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