つくろう、島の未来

2018年11月19日 月曜日

新上五島町(しんかみごとうちょう)地域おこし協力隊 兼 フリーライターの竹内 章による島グルメコラム。観光客目線ではちょっと気が付かない、地元ならではのおいしい五島飯を紹介します。

懐かしい味

「懐かしい味」って、こんな味だよな、と食べるたびに思います。

網でじっくり焼くこと数分。サツマイモの甘く香ばしい香りが立ち始めます。

しばらくすると香ばしさを増しながら表面がキツネ色に変わり始めますが、もうちょっと我慢。少し焦げ目がつくぐらいが、ちょうどいい。

アツアツの焼きたてをひと噛みすると、むっちりとした食感。そして優しい甘みがじんわり口に広がります。

これが五島列島の特産物で島人のソウルフードでもある「かんころ餅」です。

「ゆで干かんころ」作り 島の冬の風物詩

長崎では、サツマイモを薄くスライスして干したものを「かんころ」と呼びます。

かんころ餅の原料となるのは、スライスしたイモをいったんゆでてから干した「ゆで干しかんころ」。昔から作られていて、一種の保存食でした。

僕が移住した新上五島町では、年の瀬が迫ると、民家の軒先にある大きなかまどでイモをゆで上げる光景を見かけることがあります。

ゆで上がったイモは、まるで小判のように見事なこがね色。風通しが良い棚に丁寧に並べ、数日かけてカラカラになるまで干します。

伝統的なかんころ餅は、もち米とゆで干しかんころを蒸した後、砂糖を加え練り上げ、細長く成型すれば完成。ゴマやショウガ、水あめなどを混ぜ込む家庭もあります。

年の瀬、離れて暮らす子供らに

昔は、島の各家庭でよく作られていたそうですが、近年は島のお年寄りが「ふるさとの味」として本土で暮らす子や孫のために作り、年の瀬に送る程度となってしまいました。

食生活や産業構造の変化もありますが、作り手が減った一つの背景として、島の高齢化が挙げられます。

イモを育てるところから始まり、収穫して、ゆでたりこねたりと、かんころ餅づくりは意外に重労働。「身体もきついし今年から作るのをやめた」という話を毎年のように聞きます。

さらに近年、島で急増しているイノシシも追い打ちをかけています。イノシシはイモが好物。「そろそろ収穫」というタイミングで、根こそぎ食べられることも。「イノシシを太らせるためにイモを育てるのは、ばかばかしい」とこぼす人もいます。

ゆで干しかんころを作ってスーパーに売る人もわずかにいますが「残念だけど、そのうちだれも作らなくなるのでは」と見通す人もいます。

魚介を食べたいとは思いますが……

五島列島の味覚といえば魚介類が「花形」で、農作物が主役に躍り出ることはあまりありません。

ですが、サツマイモや、それを原料に作られるかんころ餅は、山がちで稲作に向いていない新上五島町の食卓を長年支えてきた歴史があります。

島を訪れる人には、もちろん自慢の魚介類もたくさん食べてほしいですが、島の食文化を語る上で欠かせないかんころ餅もぜひ食べてほしいです。

新上五島町に来たらお土産にかんころ餅はどうでしょうか?

離島経済新聞 目次

【島Column】うまいぞ五島

新上五島町地域おこし協力隊 兼 フリーライターの竹内 章の島グルメコラム。観光客目線ではちょっと気が付かない、地元ならではのおいしい五島飯を紹介します。

竹内 章(たけうち・あきら)
1974年生まれ、富山県出身。元中日新聞社記者。フリーライター。2015年、長崎県・五島列島の新上五島町に「地域おこし協力隊」として移住し活動中。趣味は釣り。

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